カシミヤ素材のデメリットとは?寿命を伸ばす方法や手入れ方法を解説
カシミヤ素材が持つデメリット
カシミヤのニットやセーター、マフラーなどは、軽くてツヤがあり、ふわふわとした素材です。
しかし、虫による被害や毛玉ができやすいなどのいくつかのデメリットがあります。
ここでは、カシミヤ素材が持つデメリットについて3つ紹介します。
虫による食害が発生しやすい
天然の動物素材であるカシミヤの繊維は、主にたんぱく質で構成されています。
そのため、どうしてもカビや虫による食害が発生しやすいという性質があります。
長期間クローゼットやタンスなどで保管する際には、しっかりと乾燥させたり、防虫剤を入れたりして虫対策をしましょう。
カシミアを食べる虫には、例えばカツオブシムシがあげられ、春に羽化した幼虫が翌年の春になるまで衣類を食べて成長します。
虫からカシミアを守る方法としては、産卵させないことや成虫を持ち帰らないことがあげられます。帰宅時に衣類を玄関で払うだけでも効果があり、洗濯で卵も成虫も取り払うことが可能です。
毛玉や毛羽立ちができやすい
カシミアは、ピリング(毛玉)ができやすい素材です。
繊維が細長いため、飛び出た繊維の端が擦れてより合わさり、毛羽になりやすく簡単に毛玉を発生させます。
毛玉の発生を抑えるには、洋服用のブラシで毛並みを整えましょう。
洋服用のブラシは合成繊維ではなく、柔らかい天然繊維のブラシを使用すると静電気が発生せずに毛並みを整えられます。
連続で使用するとヘタってしまいやすい
カシミヤは柔らかくて滑らかですが、比較的型崩れしにくい素材です。ただし、何日も連続で使用すると形状変化が起きやすくなります。
通常、カシミヤは自分で湿気の吸収と発散を繰り返し、もとの形に戻ろうとする働きを見せます。しかし、連続で使用してしまうと、もとの形に戻るだけの時間が作れず、ヘタってしまうのです。
使用する頻度は、1度着用した後は1日から2日空けるようにし、保管する際にはハンガーにかけず、平置きにしましょう。
また、カシミヤは濡れている状態では変形しやすくなるため、洗濯をして乾かす際にもハンガーは使用せず、平干しにします。
カシミヤのデメリットを解決する方法
カシミヤの大きなデメリットは、素材がデリケートなため、毛玉ができやすかったり、連続使用すると型崩れを起こしやすかったりすることです。
デメリットを解決させるには、いくつかの方法があります。
ここでは、デメリットを解決する4つの方法を紹介します。
定期的にお手入れをする
カシミヤは、軟らかくて軽いデリケートな天然素材です。
ウールと比べると繊維が細く、繊維を覆うキューティクルの突起が少ないため、肌触りがよいことが特徴です。
細くて長い繊維は保温性と放湿性が高く、内部の温度と湿度を高く保ちます。
その一方、長い繊維は毛羽立ち、毛玉になりやすい傾向にあります。
毛玉を防ぐためには、ブラッシングや洗濯をするなどの定期的なお手入れが必要です。
ローテーションで着用する
カシミヤの繊維は、空気や水分を吸収したり、放出させたりして自然に元の形に戻ろうとする性質が強い素材です。
1日着用したカシミヤは、湿気やホコリ、生地表面の擦れなどのダメージを受け、毛玉や型崩れが発生しやすい状態になります。
そのため、2日連続での着用は避け、1日から2日間隔が空くようにローテーションを組んでカシミヤを休ませる期間を作れば、型崩れしづらく長持ちさせられます。
着用後は汚れや汗を拭き取る
カシミヤは、撥水性が弱い素材です。
そのため汚れや汗が着いたまま放置すると、変色やシミ、虫食いの原因になる可能性があります。
汚れが付着していなくても、着用後はブラッシングをして毛並みを整え、汚れがついた際には薄めた中性洗剤をタオルでたたき、そのあと水で濡らしたタオルで軽くたたいて洗剤を取ります。
洗った箇所をよく乾かしたあと、再度ブラッシングをすれば手入れは完了です。
カシミヤは水に弱くて毛玉が発生しやすいため、タオルは固く絞り、また汚れた部分を擦らないようにしましょう。
汚れや変色、シミが完全に落とせなかった際には、クリーニングに出します。
毛玉は切り取って処理する
カシミヤは、極細の繊維を寄せ集めて1本の糸にするため、撚り合わせた繊維が飛びだし毛羽になりやすいという特徴があります。
飛び出した毛羽は、同様に飛び出した毛羽と絡みやすく、注意をしていても毛玉が発生してしまいます。
毛玉ができてから間もない、激しく絡み合っていない段階なら、洋服ブラシでのブラッシングで整えることが可能です。
ブラッシングでほどけない毛玉が発生したときには、無理に引っ張ったり強めにブラッシングをしたりはせず、毛玉部分を指でやさしく取り払うか、ハサミで切り取りましょう。
カシミヤ製品の寿命を伸ばすためのお手入れ方法
デリケートな素材のカシミヤは、お手入れをすることで寿命を延ばし、綺麗な状態に保てます。
お気に入りのカシミヤのセーターやストールなどを長持ちさせるためには、日々のお手入れが重要です。
ここでは、ブラッシングでのお手入れ方法と、洗濯によるお手入れ方法について詳しく紹介します。
ブラッシングでお手入れする方法
繊細なカシミヤを長持ちさせるには、繊維の流れを整えて毛玉の発生を抑えるため、洋服ブラシでブラッシングをします。
着用後は汚れやホコリの有無を問わず、毛並みに沿ってブラッシングをします。
ブラッシングをすると、汚れやホコリが落とせるだけではなく、毛並みを整えたり繊維の奥に溜まったホコリをかき出したりでき、カシミヤ本来の光沢がだせます。
ブラッシングの方法は、始めに繊維の流れとは逆に払ってホコリをかき出し、その後流れに沿ってホコリを払い落として毛並みを整えます。
その際、ブラシは一定方向に大きく動かし、生地に負担をかけないように力を入れ過ぎないようにしましょう。
ブラッシングをするとキューティクルが整えられ、光沢のある仕上がりになる他、汚れやホコリが付着しにくくなります。
● 【注意点】硬い洋服ブラシは避ける
カシミヤのブラッシングには、いくつかの注意点があります。
デリケートな素材であり、力を入れてブラッシングをしないことはもちろん、フリンジの部分はブラッシングしないようにします。
また、濡れた状態のカシミヤは型崩れしやすいため、ブラッシングをする際にはよく乾かしてからにしましょう。
使用する洋服ブラシは、毛足が長く、キメが細かい馬の毛のブラシがオススメです。
合成素材や豚の毛のブラシは硬く、生地を傷める原因になったり、静電気を発生させてホコリが着く原因になるため、カシミヤのお手入れには不向きです。
洗濯でお手入れする方法
カシミヤは水分に弱いため、クリーニングの回数は長期保存をする前に洗濯をする程度で問題ありません。
クリーニングをし過ぎると、繊維の油分が洗い流されてしまい、カシミヤのツヤや柔らかさが損なわれる可能性があるためです。
汚れやホコリを放置するとシミになったり虫による被害が発生したりするため、汚れた際にはカシミヤ可能なクリーニング店でのドライクリーニングをオススメします。
しかし、カシミヤはいくつかのポイントを抑えることで、自宅でも洗濯可能です。
まずは、脱水や乾燥後に縮みや型くずれを整えるため、カシミヤのサイズを測っておきます。
サイズを測る箇所は、袖や身頃、身幅などです。
次に、洗濯中の摩擦を避け、洗濯ネットに入れたりバスタオルで包んだりします。
洗濯ネットを使用する際には小さくたたみ、ネットの中で動かないようにし、洗濯機で洗う際には紐やバンドなどを使ってネットやバスタオルが崩れないようにします。
手洗いの場合は、桶に40℃以下のお湯、または常温の水を入れ、ウール用やドライ用などの専用洗剤で押し洗いをします。
洗濯機の場合は、手洗いモードやドライコースなどで洗いますが、ドラム缶式の洗濯機は叩きつけるようにして洗うため、カシミヤには不向きです。
次に、カシミヤの油分を補給するため、柔軟剤やリンスを入れ、洗濯機で短時間脱水したりタオルで挟んだりして水分を取ります。
最後に、平干しで乾燥させます。
● 【注意点】干すときは平干しに
カシミヤは比較的型崩れしにくい素材ですが、濡れた状態ではキューティクルが開いているため絡まりやすく、型崩れしやすくなります。
そのため、濡れたままハンガーにかけて吊るして干してしまうと、水分の重みで下に引っ張られて伸びたり型崩れしたりする可能性があります。
また、熱が加わると縮む可能性もあるため、カシミヤは日陰で平らな状態にして乾かしましょう。
乾燥機は使わずに自然乾燥させ、早く乾かしたいときには扇風機の風を当てます。
● 【注意点】取り扱い表示には必ず従う
カシミヤはデリケートな天然素材です。そのため、洗濯の際に生じる摩擦で型崩れや毛羽立ち、毛玉が発生することがあります。
綺麗に長持ちさせるためにした選択で、寿命を縮めてしまうことになりかねないため、カシミヤの衣類やアイテムに縫い付けられている取り扱い表示を確認しましょう。
取り扱い表示には洗濯ができるかや洗濯方法、アイロンはどのように当てればよいかなどが書かれています。
セーターにアイロンをかける際には、アイロン本体を生地から少し浮かして、蒸気だけをあてるようにしてかけたりあて布をしたりしてかけます。
ただし、アイロンの表示にバツ印が書かれているものは、アイロンがけはできません。
● 【注意点】通常のドライクリーニングは避ける
クリーニングに出す際には、通常のクリーニングや通常のドライクリーニングではなく、カシミヤに対応しているドライクリーニングで依頼します。
通常のドライクリーニングでは、カシミヤの油分まで洗浄され取り去られてしまい、ツヤのある光沢やふわふわとした肌触りが損なわれ、ごわついたりカサカサしたりする可能性があるためです。
クリーニング店に出す際には、事前にカシミヤに対応しているドライクリーニングのコースがあるかを、店舗に問い合わせることをオススメします。
カシミヤ素材が持つ特徴・メリット
カシミヤは、カシミヤヤギから採れる天然素材です。
デリケートな素材のカシミヤには、柔らかさや肌触り、光沢のある質感などの特徴があります。
ここでは、カシミヤのメリットについて4つ紹介します。
軽くて柔らかい
カシミヤの大きな特徴は、繊維の細さです。
人間の毛髪が約40から50ミクロンに対し、カシミヤは約14から16ミクロンのため、束ねて糸に仕上げても他の繊維より軽くやわらかな感触に仕上げられます。
そのため、コートのような重く、肩こりにつながりやすいアイテムでも、カシミヤは軽く作られています。
また、繊維を覆っているキューティクルの突起が少なく、柔らかな触感です。
暖かく付け心地がよい
カシミヤヤギは寒さの厳しい環境で生活しており、その身を守る毛は保温性に優れています。
カシミアの繊維は外気を遮断して熱を保たせるほか、毛の表面にあるキューティクルが水分を吸収して放出するため、放湿性にも優れた素材です。
内部の温度を逃がさず、湿度をコントロールして放出させるため、蒸れを防ぐ機能を備えています。
そのため、軽くて薄手の衣類だとしても、カシミヤは暖かく着用できます。
伸縮しやすい素材で型崩れしづらい
カシミヤは他の獣毛素材と比べて伸縮性が高く、弾力性や柔軟性に優れている素材です。
そのため、カシミヤの生地は滑らかでありながら、糸そのものに復元力があるため型崩れしにくく、元の形に戻りやすい特徴があります。
また、いくつもの繊維をより合わせて1本の糸にしており、糸が丈夫です。
ただし、水に濡れるとキューティクルが開いて絡みやすくなり、ハンガーで吊り下げてしまうと水分の重みで形が崩れたり生地が伸びたりする原因になります。
独特の光沢があり、見た目が美しい
カシミヤは、鱗状のキューティクル(スケール)に覆われている素材です。
突起の少ない表面を動物由来の油脂が光をまっすぐに反射させ、光を屈折させない美しい光沢やカシミヤならではの風合いを生み出しています。
ただし、繊維の油脂が洗濯することで洗い流されると、カシミヤ特有の色艶が失われてしまいます。だからといって、汚れや汗が付着したままで放置していると、生地にダメージが溜まってしまうため、こまめなお手入れが重要です。
カシミヤに関するよくある質問
ここからは、カシミアに関してよくある質問として、カシミアの混合や保管方法について紹介します。
カシミヤ100%と混合のものはどちらがいいの?
カシミアの製品には、カシミア100%のものと、合成繊維やシルクなどのカシミア混紡のものがあります。
混紡のもののメリットは、低価格であることや糸にムラがないこと、洗濯のしやすさなどがあります。
また、雨や汗にも強く、型崩れもしにくく気軽に着用でき、価格が安いためカラーやデザインなど好きなアイテムの購入が可能です。
一方、カシミヤ特有の軽さや暖かさは劣り、生地に厚みが出ます。
そのため、カシミヤの柔らかさやツヤなどの機能を重視する際にはカシミヤ100%、手軽さを重視するならば混紡のものがオススメです。
シーズンオフ時はどのように保管すればいいの?
カシミヤは毛羽立ちや毛玉ができやすく、撥水性が弱い素材です。
そのため、シーズンオフ時の長期保管前には、カビやシミ、虫対策をしましょう。
カビやシミの原因は、カシミヤについた水分や汗などです。
保管する際には洗濯をしたりクリーニング店に依頼したりして汚れやホコリを取り払い、しっかりと乾かします。
タンスやクローゼットに入れる際には、虫がつかないように防虫剤を入れます。
まとめ
カシミヤとは、極寒と極暑の環境で育ったカシミヤヤギから採れる天然素材です。
光沢があり滑らかな肌触りである一方、汚れやシミ、虫のトラブルが発生しやすいため、日々のお手入れが欠かせません。
適切なお手入れをすると寿命を延ばせるため、ブラッシングや洗濯などの対策をして、カシミヤの衣類やアイテムを長く、綺麗に使いましょう。
監修者
林 絵理子(スタイリスト)
2009年5月~Styling Office seed 小谷 晃司氏 師事
2011年11月~拠点を東京にも設けフリーランスで活動開始(大阪に関してはseed所属)
2015年4月~Styling Office seedより独立
2017年11月~brickを設立
2022年11月~brick stock room増床
(同ビル602)